文体練習
レーモン・クノーの「文体練習」という本を教えていただいた。

フランスでは教材に使われるほど親しまれているというし、
日本でも仏文関係の人にはよく知られた本らしい。
松岡正剛さんの千夜千冊の138夜でも取り上げられている。
(朝比奈弘治訳、朝日出版社)

内容は、他愛のない一文を99の書き方で書いてみせる、という
他に類を見ない「文の芸」だ。
私は読んでいて、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を想ったが、
作者は「フーガの技法」を聞いていてこの本を着想したらしい。
当たらずとも遠からずだ。

この「文体練習」、読んでみるとむしょうに面白い。
ありとあらゆる文体(スタイル)が繰り出され、息つく暇もない。
ここのところ、原文ではどうなっているんだろう?という疑問には
訳者あとがきが大変参考になる。
訳者あとがきは、フランス語を知らない私のような読者のためにも
とても親切丁寧に書いてあり、これ無くして本書を読むことは難しい。

もう一つの面白い点は、翻訳だ。
なにしろフランス語の言葉の遊びをふんだんに使っているので、
翻訳には大変な困難が伴う。
翻訳不能なものもあると聞く。
そんな時、翻訳者はどうするのか?
その答えはこの本の中にいっぱい詰まっている。
この本のイタリア語版はウンベルト・エーコ訳だというのも肯ける。

この本にはもう一冊邦訳があって、
そちらを併せて読むとさらに面白いだろう。
こちらの訳者あとがきもまた大変参考になる。
(松島征ほか訳、水声社)
私は図書館で借りて読んで気に入ったのだが、
置く場所もないしと躊躇していたら妻が手配してくれた。
最近レンズも買わずにおとなしくしていたからかもしれない。

さて、この話をここまで引っ張ってきたのは、
この「文体練習」の手法が写真の制作にも応用できる、
と考えてのことだ。
また、翻訳の問題はプリントのバリエーションにも応用できるだろう。
今年からこれを実証する意味を兼ねて、
作品のシリーズ制作を考えている。



2016年 1月 2日


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