オフの魅力
 大藤健士さんの写真展 -Africa- に行ってきました。
世田谷の巣巣(susu)という家具屋さんの二階が会場です。
 いままでは、ギャラリー会場以外での写真展(オフギャラリーとでも呼ぶのでしょうか)に対してはどうしても腰が引けてしまっていたのですが、今回は認識をあらたにしました。

 大藤さんの作品は「ゴム印画」という古典技法でプリントされています。ゴム印画はアラビアゴムを塗布した紙に感光性を持たせて印画紙とし、いくつもの工程もかけて顔料で画像を浮かび上がらせるという、工芸的とも言える根気のいる技法です。日本では野島康三などの作品で知られていますが、欧米でもピクトリアリズムの名品を数多く生み出しています。

 技法にしろスタイルにしろ、それが生まれた時点で古典になる宿命を必ず背負っています。それらを拾い集めてポストモダンと言ってみても、決して新しく生まれ変わるわけではありませんし、さらには古典になって残るものの他にも、ただ忘れ去られていくものが膨大にあって、振り返ってみればまさに死屍累々です。
 忘れられたものには、忘れられたなりの理由があることを忘れてはなりませんが、忘れられたものの忘れがたい理由を忘れてはならない理由もまた忘れてはなりません。


 さてそうは言っても、そういうものに心惹かれてしまう自分はいったいなんなのだろうかと、会場を後にして考えてしまいました。

  悪癖、奇癖、懐古僻?

  性癖、邪癖、尚古癖?

 それよりもどうやらそこには、本流から外れたオフコースへの嗜好があるように思います。20世紀の銀塩、21世紀のデジタルは、時代を動かすエンジンと言えるでしょうが、それに対してゴム印画の居場所は、たとえどんなに名品があるにしても荒僻です。そう、荒地野菊。

こうしたものへの嗜好を支えるものは、
いつでもただひとつ、美意識です。

コースを外れても、なお残る理由。
それが美意識です。


巣巣で見た大藤さんの作品たちは、オフコースの輝きを
持っていました。

2009年 2月 10日


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