愛しきものへ
島根県立美術館で開催中の「愛しきものへ 塩谷定好」展。

なんとか行きたいと思っていたのですが止むを得ず断念。
図録を送っていただいたのですが、
これが噂に違わず素晴らしくてびっくりしました。
今まで断片的にしか見えなかった作家の全体像が
くっきりと浮かび上がっています。
質・量ともに充実した内容で、
これで2000円とはありえない安さです。

特にわたしにとっては、
巻末の[資料編]に収録されている「印画製作要項」や
「私の印画修整に就いて」が非常に参考になり、
また発見がありました。

「芸術写真」時代の作家たちは
プリントに手を加える「印画修整」を
多用したことが知られていて、
具体的にはブリーチや「雑巾掛け」と呼ばれる技法などが使われた、
と伝えられています。
塩谷も「雑巾掛け」をやったと言われていたのですが、
実際にヴィンテージプリントを見ると、
どうも「雑巾掛け」とは少し違う、
あるいは他の作家よりかなり控えめに使っていたのではないか、
という疑問を感じていました。

その疑問が、今回氷解しました。
「フォトタイムス」紙に掲載されたそれらのテキストには
以前目を通していたはずなのに、
興味が「雑巾がけ」の方法を知ることだけにあったため、
実際の「応用」に関する記事は読み飛ばしてしまったようです。

ここにある塩谷作品では
「印画製作要項」の「雪日」にあるように、
シャドウ部を暗く落とす表現が取られています。
私が今まで理解していた「雑巾掛け」とは、
主に明部を抑えてしっとりと落ち着いた画面を作る手法でした。
しかも文中「蝋燭油煙修整」とあるのは、
説明を読むと、
私が理解していた「雑巾掛け」とは違う手順です。

一口に「雑巾掛け」と言っても
作家それぞれに違うやり方だったことは理解していたつもりだったのですが、
その理解は一面的に過ぎず、
不覚だったというべきでしょう。

疑問が一つ解けて、塩谷定好がますます好きになりました。



2017年 4月 10日


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