筒井さんのシューベルティアーデ
昨晩は鍵盤楽器奏者、筒井一貴さんのコンサートに行ってきました。

曲目はシューベルトの「4つの即興曲 D899」と遺作の「4つの即興曲 D935」。
会場は自由学園明日館講堂内の銀杏の間。
楽器は1820年Johann Georg Gröber製のオリジナルフォルテピアノ。

実は数日前からの風邪をこじらせていて当日朝はゲホゲホ状態だったので、医者に「夕方までに咳が止まらないと困るんです」と無理を言って薬を出してもらいました。それは薬剤師さんが「先生、ホントにこの処方でいいのですか?」と確認の電話を入れるほどの、普通ではない処方だったようです。
おかげで夕方にはすっかり咳は治まりました。

シューベルトが存命中に製作されたピアノ、もしかしたらシューベルト自身が実際に弾いたかもしれないその古典楽器による演奏は、なんというか実にたおやかな響きで、当時のウィーンの空気さえ伝わってくるようなとても豊かな世界で、演奏中私はずっと音楽を聞く幸せに浸っていました。
現代のスタインウェイに代表される重厚な低音とキラキラ輝く高音とは対極の「ウインナトーン」と呼ばれるその音世界は、現代の機能的な音の影に隠れてしまった「音楽として忘れてしまってはいけないもの」を呼び覚ましてくれるものでした。

定員30名のサロンコンサート形式なので、演奏の前後や合間に筒井さんのいろいろなお話を聞くことが出来たのですが、その中で「シューベルトは美しい、けれどそれだけではない」という部分があって、後半の遺作の「4つの即興曲 D935」の四曲目でそのことを感じることが出来、それは松尾芭蕉の事実上の辞世句「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」を想起させる深淵の世界を覗き見る瞬間でした。

アンコールは「楽興の時、第三番」。
筒井さんのシューベルティアーデ、堪能いたしました。



2017年 11月 17日


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